城田莉奈が就職ではなく院生へと進路の舵を切ったのは元来の徹底的に物事を極めるといった資質に他ならなかった。研究に没頭したい気持ちと裏腹に、生活費を工面しなければならなく自らの武器である器量の良さを最大限利用した撮影会モデル、商材モデル、はたまたエステ倶楽部から個人撮影まで精力的にこなしていたのだ。
 
 この日を莉奈は少々あらぶっていた。約束していた個人撮影をすっぽかされたからだ。ドタキャンとは直前になって断られるケースで、すっぽかしとは何の連絡もなく待ちぼうけさせられる最悪のシナリオなのである。あてにしていたギャラはもちろん交通費までその損失が及ぶのだった。

「あーあ、何やってるんだろわたし」

 深夜の研究室で力なく缶チューハイのプルドップをプシュッとやる。一人暮らしのワンルームで過ごすより水道光熱費のかからない研究室はまさに苦学生のシェルターであった。 　

 今日着るはずだった衣装をおもむろにキャリーバックからとりだし頭からすっぽりかぶると器用に下着を脱ぐ離れ業をやってのける。黄色いワンピースはお気に入りのドラミ型メイド服。酎ハイ片手にポーズを決めてみるもやはり残念な気持ちがぬぐい切れない。

「お掃除のおじちゃん来ないかな？今度は漏れなく逝かせてあげるのに」

 莉奈は決して裏切らないお掃除おじさんの小遣いをあてにせざるを得なかった。スマホでモデル募集サイトをくまなくあさっているうちにやがて深い眠りに落ちてゆくのであった。


「ふざけんなよあいつ」
 早朝のショートメールで欠員を告げられた田口幹夫は詰め所の鍵を開けてホワイトボードに記載された本日のレシピを書き換え始めた。幼稚園から小学校、中高大学までの一貫校である学園は建て増し建て増しのまるで迷路のような構造だ。この広範囲を16名の清掃員で各担当エリアを定めて管理しているのだ。欠員者が出ればそこを何人かで分割してフォローするしかない。その采配を下すのだ幹夫の最も重要な仕事なのだ。トイレを女性スタッフで埋め、教室関係を男性陣で埋める。例の離れの号館はさほど手も掛からず幹夫本人で埋めることにした。

 自身の担当エリアを大至急終了させるとようやく空も白み始めた。薄暗い通路を進み各部屋のゴミ箱内を回収する。ゴミ箱の中は臭いと思われがちだが、当学に限っては元々女子校だったこともあり苺の匂いがするのだ。それはゴミ箱一杯に甘いスイーツやお菓子のゴミで圧倒されているからである。

 幹夫は莉奈の部屋の鍵をカチっと回した。鍵の作りはドアノブの持ち手と反対側へ回すと解錠、持ち手側に回すと施錠と決められている。この重厚な鍵の開く感触はシャッターを切る時のそれに酷似している。　

 暗闇の中ドア横の電気を点けると例の診療台と散らかった机上の散乱ゴミが目に飛び込んできた。

「まったく莉奈っちのヤツ」
90リットルのゴミ袋に手際よく回収してゆく。端に寄せられたテーブルを拭きにかかると壁際との隙間のソファーからひょっこりと黄色いものが起き上がってきた。

「な、なんや！びっくりするわ」

莉奈の眠気眼が豆鉄砲を食らった鳩の目に変体する。

「あっ　田口さん」

 
  沸かしたてのドリップコーヒーを飲みながら、昨日のすっぽかし事件の取り調べよろしく幹雄はおサボりタイムを満喫した。目の前の可愛いメイドの膨れっ面は、煮ても焼いても食えないパート連中と違い癒しでしかないのだ。

「愚痴聞いてもらったお礼に早朝エステでもいかがですかご主人さまー」

ニヤケが止まらないお掃除おじさんは、若かりし頃良く利用したリッチドール阿倍野の早朝バズーカーに思いを馳せた。要約すると関西屈指のヘルスであるリッチドール阿倍野店の早朝割引サービスを思い出したと言う事だ。

 仕事中の朝っぱらからパンツ一丁で仰向けに寝っ転がると可愛い過ぎるコスプレメイドのワンピースが左足の丸太棒に跨ってくる。オイルをスリスリした両手が足元からスーッとブリーフの下から入り上へと抜けてくる。

「あーこれだ、この感触たまんねー」
幹雄の恍惚を隠しきれない面がそう呟いていらように見えた。

 ブリーフの中で莉菜の手が合唱され逸物が挟み込まれる。前屈み胸元からノーブラメイドの乳房がハッキリと見てとれる。何度かその動作を繰り返すといきなりブリーフを真下に引きおろしできたのだ。

「ご主人様こんにちわー」

 悪戯っぽい表情で逸物の腹を両手で覆いグイッと手前に引き上げてくる。親指の腹でクリクリと先端を転がしギュッと握りしめてはゆっくりと扱いてくるのだ。

コレは手コキではなくマッサージだ。

エステシシャンのテクニックで逸物を揉み解されるのだから不覚にも早々熱い憤りを噴射させてしまった。それを機に沸滾る肉棒を左右に激しく折り曲げ両手で根元から先端に絞り出す様なマッサージが止まらない。堪らずベットの縁をパンパーンっとタップして完敗の白旗を掲げるのであった。